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水沢なお より

21歳の詩人の日記

六本木クロッシング展 2016

美術館・展覧会

 夜七時に国分寺駅に居た。都内に存在する美術館は大体が五時くらいに閉館してしまうし、目当てにしていた吉祥寺美術館も到着してから十分ほどで閉館してしまうだろう時間だ。もう森美術館に行く以外の選択肢なんてなかったのかもしれない。

 森美術館で現在開催されているのは「六本木クロッシング2016展 僕の身体、あなたの声」だ。「六本木クロッシング」は森美術館が三年に一度定期的に開催しているシリーズ展で、比較的若手の作家の直近の作品が展示されている。

 中でも、気になった作家・作品が二つあるので紹介しようと思う。

 まずはミヤギフトシの「花の名前」。ミヤギフトシは生まれ故郷である沖縄と自身のセクシャリティ、男性間の親密な関係をテーマにインスタレーションによる作品を展開している。はじめは花の女神フローラの独白からはじまり、次の章ではヒュアキントス、アポロン、ゼピュルスの男性同士の三角関係の話がでてくる。そこから着想を得た「アポロとヒュアキントス」の話。プルーストとアーンの男性同士の愛。そして沖縄に在留する米軍兵士のドラグァクイーンがアーン作曲の「クロリスに」を唄う。連鎖するように様々な物語やモチーフが描かれて、見る側に開けた終わり方をする。映像もきれいで、出てくるモチーフも良いのだが、やはりそのモチーフからこぼれ落ちるいわば余白の部分にあ~良いな、と言った部分があった。たとえば、ヒュアキントスの話を語った学生は、ヒヤシンスがどのような花なのかわからないのにノートの端にヒヤシンスの花を描き続けたという。また、プルーストとアーンの話を語る男性は、昔一度だけあったことの男性を東京でたまたま見つけるとき、「見覚えるのある喉仏」だなと思い「歩き方で確信」するのだ。そういった部分が妙に温度を持っているというか、それらが積み重なって「花の名前」は成立しているのだと感じた。

 次に長谷川愛の「(不)可能な子供」。長谷川愛は未来に想定しうる生殖技術について様々なプロジェクトに取り組んでいる。この作品は同性カップルの間にふたりの遺伝子を受け継ぐ実子が生まれるかもしれない、という想定のもと実際の同性カップルの遺伝子を分析し、誕生しうる子供の姿を可視化した。iPS細胞の発見などにより、二年以内に男性カップルの間に実子ができるかもしれない、という科学者もいるらしい。

 この作品は科学技術を紹介して終わり、子供の姿を可視化して終わり、ではない。このプロジェクトを通して、議論を促すことも目標としているのだろう。

 女性カップルの間には女性しかうまれない、という言葉がなぜか深く印象に残った。

 

2016.05.14 森美術館