読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

水沢なお より

21歳の詩人の日記

二十歳の夏

思うこと

f:id:mizusawanao:20160816170030j:plain

その人とは新宿で待ち合わせをして、その時はまだ明るかった。

 
その日は現代詩手帖賞の受賞のお祝いをしてくださるとのことで、ずっと前からかなり楽しみにしていた反面、ちょっと緊張していた。緊張していたが、それは嫌な緊張感ではなくて、自分の知らない世界に足を踏み込むんだというどきどきフワフワした感覚が強かった。行ったことのない場所へ旅行する前日の夜みたいな気持ちに似てたかもしれない。
 
まずは中華をご馳走になった。
その人に任せていると、どんどんお皿がでてきて、でもそのお皿に乗っているものはどれも食べたことのないものばかりで、なのに食べると全部はじめての味がして美味しかった。ピータンって、私名前はきいたことあったけれど食べたことはなくて、うすく切られたそれがでてきても正体が何かわからないままだった。なにかの実かな、と思ったけれど、アヒルのたまごでした。白身の部分が茶色く透けていて、噛むとグニグニしていた!
じゃがいもの細切りとか、にんにくの芽とか、くらげとか。それと紹興酒も飲ませてもらった。氷の入ったグラスに茶色いそれを注ぎ、冷やしてから飲む。思ったよりもずっと飲みやすかった!味がしっかりしていて飲み物というよりそれがひとつの料理みたいな感じがした。
最後にでてきた、茹でたごま団子は、大きく深い器に湯が張ってあり、そのなかに身を寄せるようにして丸い身体が沈んでいた。神様の食べ物みたいだな、と思って、分け合って食べた。
 
外に出ると、空の色が濃くなっていて、夜の気配がアスファルトからゆらゆら沸き上がってくるようだった。あっという間に夜が来て、また素敵な場所へと連れて行ってもらった。
どこに連れて行ってもらったかとか、何があったかとかは、いまはまだないしょです、時効(?)になったらまた書こうと思います。
 
私の知らない夜が世の中にはまだまだあって、一日の終わりでもなければ、家に帰って寝るだけではない夜があるんだっておもった。
そして世の中には本当に素敵でいろいろな感性をもったひとがもっと沢山いるんだろうなと思った。内面を磨くとかそういった言葉がよくあるけど、その磨かれたものを武器みたいにして携えている方たちがかっこよかった。その人たちが持つ、時間とか出会いとか、人生経験とかが、一生手に入らない宝石みたいに思えた。
 
知らない夜は忘れられない夜になって、でもその人は今日で忘れろよ、と言った。賞をとったことは忘れろよ、と言われたので、私ははい、と言った。はい、と言って、アルコールで熱く溶けている頭の中につうっと冷たい水が流れ出したような気がした。いまの自分にこの言葉をかけてくれる人なんてほかにいないと思って、恵まれてるなぁと感じたし、やられた!と思った。将来の話とかこれからの話とかできて嬉しかったなぁ。またこんな夜がくるといいなぁと思いつつ、そのためにはもっともっと言葉とひりひりした関係にならなきゃな、なりたいって帰りの電車、一人でつり革につかまりながらずっと思っていた。