水沢なお より

ラメ入り

詩/母の日

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母の日


君の吐いたものがまだ駅のろかたに落ちていた/君はもういないのに/縮れた麺と水にとけた小麦粉だった/不快に思わない/私だけが/それを/知覧で生まれた君の頬/鏡面になった小さなアップルマークのなかで前髪を整えている/ポケットの底に沈んだトルコキキョウの花粉/「ぼくは産まれたとき手のひらに石を持っていたんだ」/まだ妹の帰ってこない部屋で、君と二人きりになる/どっちがいい?/私の瞼を舐めた君の舌/ラメできらきらしている/薄いパウダー/味がしないという/全部のみこんでよ/名前のないようなカフェで君の財布の動きを気にしている/買われるということは君のものになれるということ/ジュースをもっと慎重に飲めばよかった/水曜日の夜のことだった/君は薄くなった布団の上ですね毛を見せた/指ごとくわえてはだめだよ/知らない/昨日、君と同じリュック背負ってる人をみたよ/暗闇でも美しく光る長方形/昔、一緒にインコの世話をしていたあの子に先を越されてしまった/もう男の裸をみたんだ/食べたかも/いや食べた/「いつも思い浮かべるのは、フライを取るときの空の動き、時間が、おれに合わせて動いてくれているっていう確信」/「来世も妹がいい」/君がくるまでイルカの絵を描いていた/嫌いって悲しい言葉だね/あくびをした君の前歯にブロッコリーが挟まっている/粉のスープ・液体スープ/「おれの母さん、芽キャベツばっかり食ってんの」/公園で見た鳩ののどぼとけの青さが目に焼き付いて離れない/人類が絶滅する瞬間を知っていた/見たことがある/嘘ばっかり/夜は一人で過ごすものでしょう/気まぐれにやさしくした/キャベツから産まれた私たちがキャベツを食べてまたキャベツをうみだすことになんの不思議があるのか/キャベツに憧れることになんの哀しみがあるのか/自分の中の変なにおいに君が気づかなければいい/ほどけないように/君は私のパパに似ている/休日の午後のテレビ/その内容をばかにするきみをばかにする/いつか私のものになる日/君は私に、赤いカーネーションをくれるか

 

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数年前に書いたものです